整体コラム(2016年10月~)

コラム  2016-11-14 (月)

【生き死にはものの常なり】

僕は今でこそ読みませんが、昔はよく漫画を読みました。

 

中でも、楳図かずおさんや手塚治虫さんが好きで、彼らの代表作はほとんど読んでいました。でも引越しやらなんやかんやで、それらはみんな売ってしまったのです(今考えるともったいないことをしました…)。

 

で、ある時、たまたま手塚治虫さんの代表作でもある『ブラック・ジャック』を見つけた(目についた)ので、パラパラと立ち読みしたら、あまりに面白くて、思わず何冊か購入しました。

 

手塚治虫さんは実は、医学部卒業で医学博士なのですね(医者にならずに漫画家になっていただき、それは日本文化にとって本当によかったと思います)。

 

手塚治虫先生の偉大な所は、自分自身の行為に対しても懐疑的な視点があるところです。

 

ブラック・ジャックは超絶的な技術を持った医師(無免許)なのですが、法外な治療費を患者さん(や親などの第三者)に対して請求します。

 

その技術とメスさばきで、様々な患者の難病・奇病を治療するのですが、彼の内面は常に揺れ動いているのですね。ブラック・ジャックは単なる正義でもなんでもない。いつだって人間的な悩みを抱えているのです。

 

彼の悩みとは、自分の医療技術そのものに対して、懐疑的に向けられたものなのです。こういうところを描けるのが、手塚治虫先生の素晴らしいところです。

 

たとえばこういうセリフがあります。

 

 

「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんて おこがましいとは思わんかね……」

 

「人間のからだをあなどっちゃいかん あなどってかかると……きっとしっぺがえしをくらうぞ」

 

「人間のからだは いつもりくつどおりには治せんということだ ことに手術はそうだ……よくおぼえておきたまえ」

 

「天地神明にさからうことなかれ おごるべからず 生き死にはものの常なり 医道はよそにありと知るべし」

 

「けものや鳥は病気になっても手術なんかしない みんな自分の力で治すんだ」

 

「生きものは死ぬときには自然に死ぬものだ それを人間だけが無理に生きさせようとする」

 

 

こういった言葉が様々な登場人物によって語られるわけなのですけど、そのたびにブラック・ジャックは思い悩むのです。自分のやっていることは果たしていいことなのか、と。もしかしたら自分の行いは間違っていることなのではないかと。

 

しかし、それでもブラック・ジャックはメスを握り続けるのです。それが彼の生きる道であり、また彼の仕事だから。

 

人間の感情の機微を、こんなに丁寧に描いた作品はなかなかないと思います。これが少年誌で連載されていたというのも深い話です。

 

医療を通じて「人間とは何か?」ということ(だけ)をこの作品では描いているからです。つまり、「生と死」というものが手塚作品の根底にあるテーマなんですね。

 

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